長期金利が歴史的水準に上昇 インフレと財政懸念で国債に売り圧力
日米欧の長期金利が歴史的な水準まで上昇している。原油高によるインフレ、政府債務の拡大、AI関連の資金需要が重なり、国債の売り圧力が強まっている。金利上昇は企業の借り入れ負担と住宅ローンの返済額を押し上げ、景気を冷やす要因になる。

日米欧で広がる歴史的な金利上昇
米国では1日、長期金利の代表指標である10年物国債利回りが一時5.34%に達し、24年ぶりの高水準となった。
欧州ではフランスの10年債利回りが2日に一時4.99%と24年ぶりの水準を付け、英国も1日に5.5%台と19年ぶりの高さを記録した。
日本も9月1日に10年債利回りが3%台に達し、30年ぶりの水準で推移している。日銀の利上げ加速が意識され、2025年以降の上昇ペースは米欧を上回る。

財政懸念が国債売りを加速
金利上昇の背景にはインフレと財政悪化への不安が日米欧で共通する。中東情勢の緊迫化で原油価格が高水準で推移し、各国の拡張的な財政運営が国債売りを誘っている。
米国:歳出拡大と歳入不足
中間選挙を控えるトランプ米政権は、有権者向けに現金支給や税制優遇など財政負担を伴う政策を相次いで打ち出している。9月には医療保険制度を巡り、全米30州の約100万人に1人当たり500ドルを払い戻すと発表した。一方で関税措置による収入は司法判断による還付で伸びず、歳入は十分に増えていない。
フランス:赤字圧縮案と議会の壁
仏政府は1日に2027年度予算案を公表し、財政赤字の圧縮方針を示した。ただ少数与党政権のため、緊縮的な予算案を議会で通すのは難しいとの見方が多い。2027年春の大統領選を前に、投資家は追加の財政拡張を織り込み始めている。
金利上昇は政府の利払い負担を直接増やす。米国の政府債務は40兆ドルを超え、2026年度の国債利払い費は8月時点で約1.2兆ドルに達した。
AI投資が資金需給を変える
足元で金利上昇を加速させている要因として、AI関連の資金需要がある。米資産運用大手バンガードによると、アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフト、オラクルの5社による2026年の債券発行額は7月末時点で約1320億ドルと、2025年の930億ドルから4割増えた。各社はAI開発に必要なデータセンターなどの設備投資を急いでいる。
一般に社債は国債より利回りが高く、資金が国債から社債へ移りやすい。野村証券の宍戸知暁シニア金利ストラテジストは「巨大IT企業などは収益力が高く、投資家にとってはリスクが低い。こうした企業の社債は安全資産とされる国債とぶつかり、お金の取り合いが起きている」と指摘する。AI需要は米国だけでなく世界的な金利上昇につながっている。

金利上昇は政府の利払いだけに止まらない。企業の社債発行コストや銀行借入金利が上がり、住宅ローン金利も上昇するため、設備投資と個人消費を抑制する要因となる。