個人向け社債に注目 株より安定的、金利上昇で利率アップ!定期利息も魅力

 企業が発行する「個人向���社債」に注目が集まっています。国内の長期金利が上昇したことに伴い、社債の利率も上がっており、運用の魅力が高まっているためです。値動きが大きい株式と比べて比較的安定した収益が見込めることも特長となります。(榎田翔太)  「金利も上がってきたし、社債は投資先としてとてもいい商品だと思う」――。9月上旬、SMBC日興証券本店(東京都千代田区)で営業員から個人向け社債の説明を受けた横浜市の男性(75)はそう話した。男性は株式などで25年ほど投資をしてきたが、…

個人向け社債は、企業が投資家から資金を受け取り、あらかじめ決まった利率で利払日ごとに利息を支払い、満期日に元本を返す債券である。償還期間は1~10年程度が多く、発行体によっては35年の年限がある。購入単位は10万円から100万円程度に設定され、個人投資家の応募を促す。個人向け社債の関連画像1

利払いは年2回が一般的で、利率は固定金利が多い。利率は発行企業の格付け、市場動向、金融・財政政策を基に国債利回りへ上乗せして決まるため、同じ償還期間の国債より高くなる。株式より期待リターンは低いが、企業が倒産しない限りは元本と利息を受け取れる。値動きは株式より小さく、受け取る利息は国債より高い位置にある。

金利上昇で利率と発行額が増加

相次ぐ大型発行

東急不動産ホールディングスは3月、初の個人向け社債として償還期間5年、利率年1.904%で100億円を発行した。仏自動車大手ルノーは6月、期間4年、利率年3.02%の円建て社債を1000億円発行した。ソフトバンクグループは9月、期間7年、利率年4.75%で1兆円分を発行した。個人向け社債の関連画像2

発行額は5年前の2.5倍超

野村証券によると、個人向け社債の発行額は2025年度に2兆8233億円で、5年前の2.5倍超に増えた。2026年度も9月末までに2兆5000億円を超え、前年度を上回る可能性が高い。ソフトバンクグループが2021年に発行した期間7年の社債の利率は年2.40%、2025年9月の発行分は年4.75%で、約5年で2.35ポイント上がった。

SMBC日興証券本店の4月から9月までの個人向け社債取扱額は、前年度比で2倍弱に増加した。手島直樹本店長は、低金利が続いた時期には見られなかった水準だと指摘する。9月上旬、同本店で営業員から説明を受けた横浜市の75歳男性は、株式投資の経験が約25年あるが、個人向け社債の購入は初めて検討している。

新発債と既発債の購入経路

新発債は、企業が新たに発行する社債で、利息などの収益を見通しやすく、まとまった規模の発行時に応募すれば比較的購入しやすい。応募期間は10日程度で、発行時期は不定期である。国内の発行企業は年間40社程度、発行件数は60~70件程度のため、募集がない期間も長い。

既発債は流通市場で取引されている社債に限られ、同じ銘柄でも証券会社によって価格が異なる可能性がある。購入価格と満期までの残存期間によって利回りが変わるため、価格だけではなく残存年限も確認する必要がある。

リスクと他商品との比較

社債は金利上昇などで取引価格が変化するため、満期を待たずに売却すると元本割れする価格変動リスクがある。発行企業が倒���した場合、元本や利息を受け取れない信用リスクもある。格付け機関が投資不適格とする社債は利率が高い一方、元本と利息の支払いが滞る確率は相対的に高い。個人向け社債の関連画像3

野村資本市場研究所の江夏あかね・野村サステナビリティ研究センター長は「知名度の高い企業であることが必ずしも安全性を意味するわけではなく、社債を買う際は信用リスクや財務内容を確認する必要がある」と述べた。

大和総研の見方

大和総研の瀬戸佑基研究員は、投資を始めて間もない人がハイリスク・ハイリターンの株式にいきなり入る前に、個人向け社債を検討できる選択肢として挙げる。一方で、市場規模は株式より小さく、中途売却では事実上、証券会社に買い戻してもらう形になる。元本割れせずに現金化できるのは満期の数年先のため、資金が動かせない期間が生じる。

瀬戸研究員は、長期金利の上昇局面では定期預金や個人向け国債の金利も上がっているため、それらの商品と利率・満期・途中換金の条件を比較し、自分に合う条件を選ぶ必要があると指摘する。