米関税を巡り日系9社が一斉提訴 違法判決に備え返還請求へ

【ワシントン共同】豊田通商や住友化学など

豊田通商、住友化学、リコー、横浜ゴム、ウシオ電機、日本ガイシを含む日本企業9社が、アメリカ政府に対する関税返還訴訟を提起した。米国が相互関税の名目で課した関税について、企業側は支払済み関税の全額返還を求める手続きに入った。

原告には、兵庫県明石市に本拠を置くカワサキモータース、愛知県大口町の工作機械メーカーであるヤマザキマザック、東京に拠点を置く旧日立金属系のプロテリアルも名を連ねる。自動車、電機、素材など複数の業種にわたる9社が、同一の法的手段を選んだ。

日米関税問題のイメージ

最高裁判決前の返還請求

連邦最高裁では、関税の合法性を問う別の訴訟が審理されている。争点は、トランプ政権が中国などからの輸入品に課した相互関税の法的根拠である。仮に最高裁が関税を違法と判断しても、支払済み関税が自動的に企業へ戻る仕組みはない。行政機関が自主的な還付に動かなければ、企業は別途の訴訟を起こして返還を実現する必要がある。9社はこの点を踏まえ、最高裁判決を待たずに返還請求の訴訟を提起した。

IEEPAの解釈が争点

訴状の中心は、国際緊急経済権限法(IEEPA)の解釈にある。IEEPAは、国家安全保障や経済に対する異例の脅威がある場合に、大統領が経済的制限措置を発動できると定める法律である。これまで資産凍結などに使われてきた権限を、輸入品への関税という形で行使できるかどうかが問われている。企業側は、この関税賦課がIEEPAの許容範囲を超える越権行為だと主張している。

通商拡大法232条に基づく関税は対象外

今回の訴訟では、自動車産業などに対する分野別の追加関税は請求対象から外されている。これらの措置は別の通商法や通商拡大法232条に基づいて発動されたためである。原告企業は、IEEPAに依拠した関税措置に限定して返還を求める構成をとっている。

外交交渉以外の法的手段

豊田通商や住友化学を含む原告企業は、外交交渉やロビイングだけでは支払済み関税の回復に至らないとして、訴訟手続きに入った。

最高裁判断の先例効果

連邦最高裁が政府の関税を違法と判断し、本件で全額返還命令が確定すれば、同じ関税を支払った他の輸出企業にとって先例となる。

判決後の手続き

最高裁が違法判断を示した場合、原告9社の返還請求は効力を持ち、還付手続きが動き始める。政府側の主張が通った場合でも、各社が別の法理で争い続ける権利は失われない。次の段階は、連邦最高裁の判断と、その後の訴訟手続きに委ねられている。