マーゴット・ロビーが毎朝待ちわびた、コリン・ファレル手作りのポテトチップスサンド 久石譲が初ハリウッド実写で見せた沈黙の語り口
12月19日公開の『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』で、主演をマーゴット・ロビーとコリン・ファレルが務める。音楽は久石譲。久石が日本人作曲家として初めて、ハリウッド実写映画の劇伴を単独で手がけた作品である。この一点が、本作を2025年末の公開作のなかで区別している。
久石はスタジオジブリ作品や北野武監督作で評価を積んできたが、ハリウッドの劇映画から声がかかることは長らくなかった。最初のハリウッド実写劇伴の依頼が、コゴナダ監督の本作だった。監督が求めたのは、日本のアニメーションや北野作品で知られる叙情の持ち込みだけではない。音数を極端に増やさない久石の作曲が、説明を最小限にする監督の演出と合ったという判断が、起用の背景にある。
物語は、友人の結婚式で偶然出会った男女が、レンタカーのナビゲーションに導かれ、「人生で最もやり直したい過去の一日」にタイムスリップする設定だ。タイムトラベルを扱う作品はハリウッドに数多くある。本作の違いは、戻れるのが「一日だけ」という制約である。過去の改変というSF的な興味よりも、限られた時間の中で誰と何を話すかという対話に物語が集中する。

コリン・ファレルが毎朝用意したポテトチップスサンド
撮影現場で共有されていたエピソードがある。ファレルはロビーのために、毎朝手作りのサンドイッチを用意していた。ポテトチップスとバターを挟んだだけの、通称「チッピーサンドイッチ」である。ロビーはこれを「現場での楽しみのひとつだった」と振り返っている。
ファレルとロビーの共演は本作が初めてである。コゴナダ監督は撮影が始まった瞬間から二人の呼吸が合っていたと述べている。その言葉を裏付ける具体例が、このポテトチップスサンドだ。ファレルが差し出したのは高級なケータリングではなく、手づかみで食べられる即席の一品だった。過去の痛みに向き合う重いシーンを共にする相手に、気を遣わせないよう用意した可能性がある。ロビーが「現場での楽しみのひとつだった」と懐かしむ口調には、社交辞令ではない実感が残っている。
二度目の協働で監督とファレルが交わした評価
コゴナダ監督とファレルの協働は、前作『アフター・ヤン』に続いて二度目である。ファレルは監督を「映画芸術を自在に操り、言葉を超えて観客の感情に触れる」と評している。監督はファレルをロマンチックな詩人と呼ぶ。
ファレルが「言葉を超えて」と表現した点は、本作の演技のあり方にそのまま重なる。タイムスリップという非現実的な装置を使いながら、物語の核は「過去の一日に誰と向き合うか」という対話にある。だが、ファレルは監督の演出の中心を言葉以外の部分に見ている。台詞の応酬ではなく、沈黙や視線のやりとりで進む場面が多いことを示す発言だ。久石譲の音数を抑えたスコアが、その沈黙を支える。監督の演出、ファレルの演技、久石の音楽は同じ方向に重なっている。
ロビーが現場に留まり続けた理由
ロビーは撮影期間中、頻繁に現場に足を運び、本作の体験を特別なものだったと語っている。主演俳優が自分の出番以外も現場に留まることは、スケジュールの都合上容易ではない。
前作『アフター・ヤン』でも見せた、説明を最小限にするコゴナダの演出が本作でも続いている。ロビーが現場に居続けたのは、自分の演技が監督のフレームにどう収まるかをカメラの外から確認する必要があったためとみられる。彼女は主演に加えて製作も務めた。この作品は出演作であると同時に、製作面での判断力が問われる場でもあった。
12月19日に公開される本作は、主演がマーゴット・ロビーとコリン・ファレル、音楽を久石譲が手がける。久石にとって初のハリウッド実写映画の単独劇伴であり、ファレルは『イニシェリン島の精霊』、ロビーは『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で主演として実績を示している。コゴナダ監督は前作『アフター・ヤン』で批評家の支持を得ており、賞レースでも話題になる材料はそろっている。ただし、興行的な射程は未知数だ。